先日、ネットやニュースでテニス選手が大会を棄権し、
うつ病を告白したという話題が世間を騒がせていました。

もう15年以上前の話になりますが、
トレーナーとして関わった陸上の選手で思い出す人がいます。
ある陸上の全国的な大会で大会初日の一番に会った選手Kさん。
(ここでは仮にKさんと呼びますね。)

その頃、私はある大学の先生のところで
「スポーツメンタルトレーニング」について勉強をしていました。

Kさんの体を触診し、どこか気になるところはないかと聞くと突然泣き出す。
筋肉の状態は悪くなさそうなのに。
「この前、横浜で体を診てもらったばかり…、うつなんだ…」と言う。
大会初日の午前中は調整に来る選手も少なかったので、
しばらく話を聞き、アドバイスをしたりして過ごしていました。

競技前の召集、スタート地点に移動時、トレーナーブースの前を通る時には必ず声をかけ様子を見ていました。
初日うつむいて涙流していたKさん、最終日には顔を上げ少し笑顔をみせてくれるようになり私も嬉しかった。

トップアスリートと呼ばれるような位置にいる人々のストレスはいかほどなのか?
私がいくら想像したところで計り知れない。

世界で活躍するテニス選手も、Kさんも、ただ楽しいだけでない。
他の期待を受けながらの「勝ちを求められる」、自分との戦いも時に苦しそう。
単純に記録や対戦相手だけじゃない相手と戦っている。
とても切なくなる気持ちになります。

うつになる原因は、きっかけがあると聞きます。
私がそういう病を治すことができないのが歯痒い。

辛さを少しだけでも理解してあげたいと話を聞いていました。
心が少しでも休まるように。

その後、Kさんと手紙のやり取りを数回していたことがあります。
時折思い出します。
「今、元気にしていますか?」気になっています。